日本人見つけた!

9.「継承語教育」ロッキーズ日本語アカデミー

こんにちは!皆さんのご家庭では、何語を話されていますか?
我が家は日本人の私と、日本語を全く話せないアメリカ人の主人の間に子供が3人おり、子供が生まれるたびに「絶対に日本語で育てる!」と誓いつつ、結局毎回ギブアップしてしまい、残念ながら100%英語での会話です。
日本人なのに、日本語を教えていない我が身に劣等感を感じています。
これまでアメリカで多くの日系コミュニティの方々に出会う機会がありましたが、お子さんに日本語を教えられてる親御さんには頭が上がりません。。。

さて、今回はデンバー北部にある「ロッキーズ日本語アカデミー」の関係者の方々にお話をお伺いさせていただきました!ある土曜日、学校を訪れると、元気よく迎えてくださったのがこちらの皆さん。

全米各地に、いわゆる「補習校」と呼ばれる学校は百校以上存在します。アメリカにいながら、日本の学校で教えられる五科目をすべて日本語で教える学校から、日本語だけを教える学校など、教育方針は様々。親の仕事の関係で数年だけアメリカ暮らしをする日本人の子供が主な学校から、生まれも育ちもアメリカで日本語は第二か国語である生徒が多い学校など、学校により生徒のバックグラウンドも多様。

数ある学校のうちの一つ、ロッキーズ日本語アカデミー。(下記ロッキーズ校*)
今回は上記↑写真、左側の理事のお二人のうち、学校の創立者の一人でもある優香さんと、百合香さんをメインに、学校の歴史や教育方針などについて教えていただきました。

創立者の一人で、現在理事でもある田中チェンバース・優香さんに学校開設のきっかけを尋ねたところ、「当時4歳だった娘が、レストランでたまたま知らない日本人の子供に出会ったときの嬉しそうにする表情を見て、自分と同じ日本語を話す仲間を見つけてあげたいと思った」とのこと。
感銘を受けた優香さんは早速、なんと我が”デンバージャパン”のサイトにて(嬉しい♪)「日本語を勉強する場を作る仲間」を募集したところ、3人の同志が見つかり、2006年、4人のお母さんたちによりロッキーズ校が創設されました。

口コミ等で生徒募集をし、オープン当初は3歳児、4歳児、5歳児の3クラス、生徒数20名ほど、先生3名ほどの規模で、デイケア施設の一部を借りて運営が始まりました。
当時は、人事、会計、カリキュラム考案から実際に教鞭をとるなど、学校運営に関わるすべての業務をお母さん仲間で遂行しました。開校から16年目となる現在では、生徒数は約130名、クラスの数も13種、にまで成長を遂げ、学校のサイズは大きく変わりましたが、当初から変わっていないのが、ロッキーズ校の教育方針の柱である、「継承語教育」。

継承語とは?(Heritage Language)
家庭で使う言語を、親、兄弟から引き継がれ、これからも引き継いでいくのが「継承語。」
現地語(この場合、英語)を母国語とし、継承語(親の母国語=日本語=第二か国語)を習得することで両親や親戚とのコミュニケーションがとれ、自らのルーツである日本文化を理解し、日系人としてのプライドを持って成長してもらうことが大きな目的。
ロッキーズ校の場合も、生活の基盤がアメリカで、英語を母国語とし、片親が日本人のため日本語を第二か国語として使う生徒が大半だそうです。

ロッキーズ校開設2年目から教員チームに加わり、現在はディレクター兼、CUボルダー校の日本語専任講師であるシブリ・久子先生にもお話を伺いました。
「日本文化が背景にありながらもアメリカで育つ生徒たちとって、やはり住んでいるアメリカ文化の方がなじみがあるので、アメリカ文化を日本語で教えたり、”なんとなく知っている日本文化”と”アメリカ文化”との類似相違点を伝えることでもう少し明確に頭に描いて理解できるようになります。」

学校の特徴として、一般的に州立大学では単位が認められるAP (Advanced Placement) ジャパニーズクラスも提供しています。APジャパニーズのレベルの日本語を高校生のうちに勉強しテストで、一定以上のスコアを獲得すれば、多くの大学で取得必須な外国語クラスの単位として認められるため、大学入学後はその時間を使い、代わりに違う授業を選択できるというメリットもあります。これまで、APジャパニーズテストで最高スコアを獲得した生徒は、13名となったそうです。

更にロッキーズ校では、親御さん向けのクラスを来年度再開する予定で、2歳児と親御さんが一緒に受ける”マミー&ミー”クラスでは、家庭での日本語教育の仕方を教えられています。やはり先生たちが生徒にどれだけ教えても、家庭で実践されないと言語は浸透しないので、親御さん向けのクラスがあるのはありがたいですね。(私も今更ですがこのクラス受けたいなぁ。)

また、久子先生含め、先生たちにとって何より嬉しいのは、今では大学生になった学校開設当初の生徒が、アシスタント教師として働いてくれていること。「小さい時にこの学校に通って良かった!」と言われることが教える側にとってのご褒美。成長した生徒たちにとっては、学んだ「にほんご」はもちろんのこと、それを一緒に学んだ「仲間」もかけがえのない宝物。
将来のビジョンとして、生徒や小さな子を育てる親御さんに対して、卒業生から過去の教育についての良かった点や改善点、生徒としての思いと経験談などを、逆に教えてもらう機会を設けたいと仰る久子先生。

こうして先生たち、親御さん、生徒本人の努力により、日本語と日本文化が継承され、”Circle of life"としてこれからも引き継がれていくのでしょう。無限の価値がある、未来への投資ですね。

ちなみに私がお邪魔したこの日も、「お迎えの時間」には、卒業生らしき「お姉ちゃん」が兄弟のお迎えにきており、先生たちと楽しそうに日本語で会話している姿を拝見し、”教える側と生徒の距離の近さ”を垣間見ることができました。

余談になりますが、最近では、両親がアメリカ人の子供の間でも、アニメ人気のおかげで、日本語を学びに来る生徒も少しずつ増えているそうです。日本人として、私たちの言語や文化に対して興味と理解が深まることは嬉しいですよね。私たち日本をルーツに持つひとりひとりが、「日本」にしかない伝統、文化、良さに自信をもって、「継承」していきましょう!

先生ならびに関係者の皆さん、お忙しいところお話させていただきありがとうございました!!

9月開始となる新年度の入校に関するお申し込みは
こちらまで 
学校ウェブサイト

Date published: 2022.4
執筆者プロフィール
モンルイ絵里子

モンルイ絵里子
北海道出身。3人娘の母、コロラド州不動産エージェントとして毎日忙しくもエキサイティングな日々を送っています!15年ほど住んだ大都会のNYから、2019年に夫の仕事の関係でずっと憧れていたデンバーへ家族で移住。大自然に溢れるコロラドが大好きです♪ 「デンバー働く女性の会」非営利団体(コロラド州人認定)の主宰も務める。お家探しやコロラドに関する質問はいつでもお問い合わせください。
 eriko.monlouis@kw.com

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