日本人見つけた!

14. お好み焼き店 Osaka’s のオーナー 田村さん

こちらの日本人経営者の方を紹介するコーナーも今回が最終回。
それに相応しい大御所、人生と経営の大先輩で、一度は退職後も尚、挑戦し続けていらっしゃる田村幸嗣さんにお会いしてきました。

(↑写真は田村さんと、奥様の真理さん)

既にファンの方は多いと思いますが、ボルダーにあるお好み焼き専門店、Osaka’sはご存じですか。ず~っと気になっていたレストランで、私が最初に行ったのは昨年の秋ごろ。日本人のお客様とボルダーの物件の内見後、お腹がすいたので一緒にご飯でも、と成り行きで伺ったのがOsaka’s。
その日の開店時間直後に訪れたためすぐに着席できましたが、その後は続々とお客様が来られすぐに満席状態。

オーナーである田村さんは各テーブルに来て、いらっしゃいませ、と気さくに話しかけてくれる。挨拶で始まった会話が面白くて、お食事の間中ずっとお相手をしてもらうことに。さすが大阪人、話のテンポが良く、話が尽きない。笑顔が可愛いお嬢様(智子さん)が表を切り盛りされており、家族の仲の良さも見て取れる。まだ日本から来たばかりという寿司シェフにもお会いでき、前回ご紹介した木田さん作の寿司カウンター奥で寿司を握っておられた。

さて、田村さんのバックグラウンドですが、ボルダーでお好み焼き屋を始めるまでは、レストラン業にはほど遠い、神戸にある医療検査機器関連の一部上場会社で長年勤務されていた。ドイツやロサンゼルスでの駐在を経て、会社の売り上げを300億円から3000億円にまで成長させ、役員退職時には部下が三千人以上もいる、ビジネスの神様のような方。66才で役員ポジションを退職をされ、なんと、その2か月後にはボルダーに移り、経験値ゼロのレストラン業を開始し、大繁盛させている、まさに雲の上の存在。

長年勤めた日本企業での経験とレストラン業は全くの別物だが、双方ビジネスであることには違いない。当時の経験から今も生かせていることは、「人とのつながりを大事にすること」と答えられる。相手の年齢やヒエラルキーなどは気にせず、信頼できる人材を集めることが田村さんの得意とすること。
例えばドイツ駐在任務中には、当初50名だったチームを、最終的には1700名にまで成長させた。ビジネスでは通常「数字」に最重点を置く場合が多いが、田村さんはそれよりも「人材」を重視。目標の数字を達成するには、どういう「人材」が必要なのかに重点を置き、相応しい人材が集まれば、結果は自動的についてくることを信じ、次々と結果を出した。”Why”と”How”をチームと分かり合うまで話し合い、ビジョンをチーム内でクリアにしてから実行と運営を繰り返すと、目標以上の結果を出せる。気づいたら優秀で信頼できる仲間に囲まれていた。

これだけ業績を残されて引退されたのであれば、あとはゴルフや旅行など趣味三昧、リラックスして生活もできるはずの田村さんですが、なぜ日本で引退後にボルダーでお好み焼き屋を開くことにしたのか。

お好み焼き屋は前からやりたかったそうで、晩婚だった奥様、真理さんへのプロポーズもなんと「アメリカで一緒にお好み焼きを広げよう!」だったとか!? でもなぜ、ボルダー!?
実は市民ランナーとして長年マラソンを趣味としていた田村さん。①勤めていた日本企業の実業団には、オリンピックのマラソン金メダリストである某有名ランナーが属しており、高地トレーニングでボルダーにくる日本人ランナーと深いつながりがあった。②智子さん(お嬢様)が、当時ボルダーに行き来していた某選手のアスレチックトレーナーとして働く機会があった。③智子さんが専門とするロルフィングを勉強できる学校がボルダーにあった。
このように「田村さん」と「ボルダー」の間には偶然かつ特別な引力が働き、ご自身も「ボルダーにきたことは天命に従っているように感じる」とおっしゃる。場所、タイミング すべてを、何かの大きな力にアレンジされた気がするそう。

日本で田村さんがまだ現職役員だった頃、ボルダーにお好み焼きを出店することを決めてからは、なんと真理さんがひとまず神戸で小さなお好み焼き屋を開き、レストラン経営のノウハウを身に着け、アメリカ出店に関わるシェフなど重要な人材も確保した。経営のプロではあっても、レストランでのサービスには無知だった田村さんを、バシバシ「調教」したのは、前職がウェディングプランナーで、おもてなしのプロである奥様の真理さん。いくつになっても夢を追いかける田村さんにとって一番力強いチームメートである奥様には、田村さんも頭が上がらないそう。まだまだ挑戦をし続ける田村さんに、リタイアする予定はなさそうですね、とお聞きしたところ、「僕が家にいると妻がきっと困るので(家では邪魔者!? 笑)、元気な限りは仕事を続ける予定!」と笑っていました。

そんな田村さんの夢とは?
全米にお好み焼きとお好みバーガーを広めること。現時点では、全米でもお好み焼き専門店は数点しかなく、コロラドではOsaka'sが唯一。既に英語で通じる「寿司」、「ラーメン」の次に、「お好み焼き」を第三の日本食として全米に広めたい。現在は日、月、木曜限定で提供されているお好みバーガーを糧に、初めて日本人が作った大人気のファストカジュアル・チェーンとして全米に広めたいそう。

ご本人にも伝えましたが、田村さんのお話を伺っていると、「人生が簡単に聞こえる」くらい大成功をポンポンと収められていますが、きっと凡人との違いは、「メリット・デメリット」を悩む時間があるなら、とりあえず行動に移すこと。熱意と誠意をもって行動し続ければできないことなんてないよ、と教えられた気がします。

そんな田村さんが、結婚式などでアドバイスを求められたときによく渡す言葉がこちら:
「平凡な人生と、波乱万丈な人生があるなら、波乱万丈な人生を選んで、おもしろおかしい、悔いのない人生を。」

昨年の暮れに、私が運営しているFacebookの「コロラド日本人会」というグループで、Osaka’sでの忘年会を企画したところ12名が集まり、初対面を含む日本人同士でワイワイ、おいしいお好み焼きをいただいた際の写真がこちら。↓ またお邪魔しますので、田村さん、どうぞよろしくお願いします!

Osaka’s
2460 Canyon Blvd Suite #1, Boulder, CO 80302
Phone: (720) 398-9115
https://www.osakasrestaurant.com/

執筆者プロフィール
モンルイ絵里子

モンルイ絵里子
北海道出身。3人娘の母、コロラド州不動産エージェントとして毎日忙しくもエキサイティングな日々を送っています!15年ほど住んだ大都会のNYから、2019年に夫の仕事の関係でずっと憧れていたデンバーへ家族で移住。大自然に溢れるコロラドが大好きです♪ 「デンバー働く女性の会」非営利団体(コロラド州人認定)の主宰も務める。お家探しやコロラドに関する質問はいつでもお問い合わせください。
 eriko.monlouis@kw.com

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