HOME
- - -
- - - - - - -
- - -
とことんコロラドライフ 2003年10月号

ダウンタウンおすすめスポット その4

デンバーの皆様、お元気ですか。うりです。
秋もだんだんと深まり、紅葉の美しい季節となりました。いつもは作り物の様に見えるダウンタウンの木々も、この時期やはり色を落として、都会のほとりに「小さな秋」の訪れです。秋と言えば読書の秋、食欲の秋、スポーツの秋と、本格的な冬の前のひとときを、皆様も楽しんでおられる事と思います。

デンバーは、1年平均300日以上も晴れの日なので、マイルハイシティーの日差しの強い夏よりも、冬の方が過ごしやすいと私は感じます。それでもやはり雪道の運転や、冬になると跳ね上がる光熱費の心配をする事も無く、絵の具を散らしたパレットの様に染まるこの季節、私は良く散策に出かけます。

今回は、そんな私の散歩道、チェリー・クリーク遊歩道(Cherry Creek Trail)をご案内いたしましょう。

imageチェリー・クリークは、オーロラ市にあるチェリー・クリーク湖と、ダウンタウンの北を流れるサウス・プラット川を結ぶ小川で、ダウンタウン周辺ではスピア通り(Speer Boulevard)に沿って、南東から北西に流れています。スピア通りに挟まれた堀にチェリークリークが流れ、その横に綺麗に舗装された遊歩道が続いています。今日はそれを南、チェリー・クリーク・ショッピングセンターの方に歩いてみましょう。

コロラド大学デンバー校や、メトロポリタン州立大学のあるオーラリア・キャンパス(Auraria Campus)の方のこの遊歩道は、自転車やローラーブレード用の高速道と、ジョギングや歩いている人の為の道とで、チェリー・クリークを挟んで二手に別れています。しかしスタウト通り(Stout Street)を過ぎた辺りからは1本道となるので、事故に遭わない様に気を付けて、右側通行を守って歩きます。

今日は見事な秋晴れの日で、青空が眼に痛いほどです。側を流れるせせらぎは清らかで、心を落ち着かせてくれます。所々いろいろな水鳥が餌を探していたり、ぷるぷると水浴びをしていたり、時々この小道に架かる橋の陰でお昼寝したりしています。交通量の多いスピア通りにとは対照的に、ここは都会の楽園を感じさせ、気持ちが和んで、何となく懐かしい日々を思い出します。

私は関東の城下町の生まれで、子供の頃は沢山の自然に囲まれて過ごしました。その頃その町には子供が溢れんばかりに住んでいて、山に登れば木に登り、池に行ったらオタマジャクシやザリガニを獲って、ここからはあまり大きな声では言えませんが、重要文化財の寺の前で三角ベースの野球をしたり、田んぼで泥んこになったり、人の家の屋根に登ったり、わんぱくぶりを発揮していました。

imageそんな事を思い出しながらチェリー・クリークのほとりを歩いていると、犬が2匹、勢い良くチェリー・クリークに飛び込みました。どうやら川向かいのショートパンツの女性の投げるテニスボールを追い駆けている様です。そして私の様にのんびりと歩いている人もいれば、せわしそうにスピードをかけて自転車で過ぎ去る人もいます。いつもは私もジョギングやローラーブレード等、ここを訪れる時は運動を目的に来るのですが、今日は写真を撮りつつゆっくり歩きます。華氏80度(摂氏約27度)を超す暖かな陽気の今日、こうして景色を楽しみながら歩くのは、普段気付かなかった物が目に入り、チェリー・クリークはいつもと違った表情を見せてくれます。

「チェリー・クリーク」(サクランボの実る川)とは、アメリカの先住民、インディアンの人達によって名付けられたそうです。そのサクランボとは、チョーク・チェリー(Choke Cherry)と呼ばれる、小さな赤く苦い実の事です。そしてゴールドラッシュの19世紀半ば、金塊を求めてこのチェリー・クリークの川の側に移り住んで来た人々に、インディアンの人達は言いました。

「この川は必ず氾濫(はんらん)する」、と。

何年もこの土地に住んでいるインディアンのその警告を無視して、チェリー・クリークの川沿いは発展し、沢山のビジネスが営まれました。1859年、コロラド最古の新聞紙、「ロッキー・マウンテン・ニュース」(Rocky Mountain News)も、この川を基点として誕生しました。

しかし1863年、インディアンの人々が予言した通り、チェリー・クリークは大洪水にみまわれて、全ては文字通り、「水の泡」となってしまいます。そして度重なる洪水の後、1904年から1912年まで市長であったロバート・スピア氏が指揮を取り、デンバーの街並みを、「フランスのパリの様に」建て直す計画を立てました。その結果、街には10万本以上もの木々が植えられ、荒れた道路は舗装され、そして沢山の洗練された建物や公園と共に、スピア通りとチェリー・クリーク遊歩道が生まれました。

imageチェリー・クリークには小さな滝が所々あり、今年の春の湿った積雪のなごりなのか、大小の木々が覆い被さるように茂っています。堀の壁には紅葉した蔦が絡まっていて、まだ緑の多いチェリークリークに、鮮やかな彩りを添えています。流れる水に手を入れると、もうひんやりと冷たくて、まだ暖かいデンバーと言えど、その水はもう深い秋です。

私が初めて通った小学校は、少子化を理由に、今は廃校となってしまったそうです。それでも前回帰郷した時には、やはり思い出に包まれて、住み慣れてしまったロッキーの盆地とは違う環境に、忘れかけていた記憶が甦りました。私のふるさとの小川の川べりには沢山の笹が生えていて、私は良く笹舟を作って、その川に流していました。

チェリークリークのほとりに笹は生えてはいないけれど、遊歩道と川の間はどこまでも緑の草木に覆われています。小川に横たわる岩も、緑の藻が所狭しと生い茂り、青く透明な流れる水とのコントラストを描いていて美しいです。

imageクラークソン通り(Clarkson Street)を繋ぐ道で遊歩道を降り、スピア通りを横切ると、今日の目的地の公園に着きました。このアラモ・プラシタ公園(Alamo Placita Park)は、ダウンタウンの南、キャピタル・ヒルと、ワシントン・パーク言う地域の間にあるのですが、手入れがとても行き届いていて、どちらかと言うとお金の掛かっていそうなエリアです。そして春から今の時期にかけてはいつも花が満開で、ダウンタウンからチェリー・クリーク遊歩道を通る時に立ち寄る、私のお気に入りの場所です。

咲き乱れる赤い花とススキを眺めながら木陰のベンチに座っていると、沢山の人々がチェリー・クリークに続く道を行き来するのが見えます。ダウンタウンやオーラリア・キャンパスに繋がるこの遊歩道を通勤、通学に、運動がてら利用している人も沢山いて、車以外の交通手段のオプションとなっています。その為午前8時頃から9時頃と、午後5時頃から6時頃は、車道と同じく込み合いますが、それ以外の時間帯は比較的空いている様です。

今日は天候に恵まれ、思い出に残る写真も沢山撮れました。公園でひと休みした後は、今来た道を走って帰る事にします。足を伸ばしてストレッチしていたら、若いお母さんと小さな子供が二人、チェリー・クリークの川べりの中に入って来ました。この子供達も、大きくなったらチェリー・クリークのこの道を、通学や通勤に利用するのかもしれません。チェリー・クリークの小川を見ていると、もしかしたら私が昔、故郷の川に流した笹舟がこの川に浮かんでいる様な気がして、私は走っているスピードを少し弛めて、流れを覗いて見たりするのでした。

ご意見、ご感想はDenver Japanまでどうぞ。

* バックナンバー